当記事では、著作権保護や各施設のルール遵守のため、各アートスポットの外観以外はイメージ画像を使用しています。
目次
- 1 光と空間のアーティスト「ジェームズ・タレル」とは?
- 2 日本でジェームズ・タレル作品を鑑賞できる美術館【11選】
- 3 まとめ:ジェームズ・タレルの作品に出会う、日本の美術館巡り
光と空間のアーティスト「ジェームズ・タレル」とは?

ジェームズ・タレル(James TURRELL)さんは、光と空間を題材とした作品を創り出す、アメリカ出身の現代アーティストです。
光そのものを素材として、人間の知覚と空間の認識を問いかけるインスタレーション(空間体験型アート)で世界的に知られています。
特に、日本国内には彼の哲学を深く体感できる恒久作品が複数点在しており、アート愛好家や非日常的な体験を求める旅行者たちを惹きつけています。
「光の魔術師」とも称されるタレル作品の真髄は、光が織りなすその空間の美しさだけでなく、鑑賞者自身の内奥にある感覚とじっくり向き合えることです。
ここからは、ジェームズ・タレルさんの経歴と思想を解説し、彼の作品をより深く理解するための基本情報をまとめます。
ジェームズ・タレルの経歴とアート界へ与えた影響

ジェームズ・タレルさんは、1943年アメリカ・ロサンゼルス生まれです。
ポモナカレッジで知覚心理学や数学・地学・天文学などの自然科学分野を学び、その後、カリフォルニア大学とクレアモント大学院大学で芸術を研究しました。
1968年から1971年まで「アメリカ航空宇宙局(NASA)」に勤務した後、光の投影に関するアート作品の研究・制作をはじめています。
1970年代からは日本をはじめとする世界各地で展覧会を開催し、光や空間といった非物質的な要素を表現の中心とした革新性が、アート界に極めて大きな影響を与えてきました。
また、日本では直島や越後妻有などの地域活性化に大きく貢献してきた点も、タレル作品がアート界、また世界中の各地域に及ぼしてきた影響力を物語っています。
参照:越後妻有 光の館「ジェームズ・タレル」
ジェームズ・タレル作品の特徴と知覚に対する思想

ジェームズ・タレルさんの作品は、光そのものを主題とし、鑑賞者の知覚に直接働きかける「体験型」の作品である点が最大の魅力です。
彼は、光を形や色を持った「物質」のように感じさせ、人間が光や色を認識する過程を、作品を通じて提示しています。
日本にあるおもなジェームズ・タレル作品の特徴と作品名は、以下の通りです。
「スカイ・スペース(Skyspace)」シリーズ
天井に空いた四角い穴で、空を絵画のように切り取る作品です。移り変わる雲の表情を楽しめるだけでなく、自然光とカラフルな照明の対比により光の神秘性がより際立ちます。
【作品例】地中美術館『オープン・スカイ』、金沢21世紀美術館『ブルー・プラネット・スカイ』、光の館『アウトサイドイン』など
「ガンツフェルト」「アパチャー」シリーズ
カラフルな光や暗闇に包まれた空間で、「光を感じる」体験型作品です。時間や場所など空間を把握する知覚を失う中で、鑑賞者が自らの考えと深く向き合う時間を体験できます。
【作品例】地中美術館『オープン・フィールド』、南寺『バックサイド・オブ・ザ・ムーン』など
「パーセプチュアル・セル(知覚の小部屋)」シリーズ
小さな体験型装置の中で、移り変わる光に包まれる作品です。視野に空間を把握する手がかりのない状態で、鑑賞者は目の奥や脳内で光そのものの存在を知覚します。
【作品例】21世紀美術館『ガスワークス』、名古屋市美術館『知覚の部屋 テレフォン・ブース ; 意識の変容』、埼玉県立近代美術館・世田谷美術館『テレフォン・ブース』など
「マグネトロン」シリーズ
真っ白な壁面に設けられたテレビのディスプレイ状の開口部から、微妙に移り変わる光の明滅を鑑賞する作品です。空間に浮かぶような光の揺らめきをのんびり眺められます。
【作品例】霧島アートの森『NHK-lite』、UESHIMA MUSEUM『Boris』など
「プロジェクション・ピース」シリーズ
プロジェクターで壁に投影した光が、まるで壁から飛び出した立方体が浮かんでいるように見える作品です。ジェームズ・タレルさんの初期の代表作シリーズです。
【作品例】地中美術館『アフラム、ペール・ブルー』など
光と空間を知覚する、タレル作品にしかないユニークなアート体験を、さまざまな種類の作品を通して楽しんでみてください。
日本でジェームズ・タレル作品を鑑賞できる美術館【11選】

47都道府県を制覇するほど旅好きの私は、瀬戸内海の島巡りで立ち寄った地中美術館で『オープン・フィールド』を体験してから、ジェームズ・タレル作品の虜になりました。
直島の地中美術館と南寺のほかに、「日本で彼の作品を楽しめる美術館はあるの?」と思い調べた経験を活かし、今回はタレル作品を鑑賞できる日本の美術館を11施設ご紹介します。
この記事が、国内で体験できるジェームズ・タレル作品を探している方のお役に立てれば幸いです。
地中美術館(香川県/直島)

地中美術館は、「自然と人間との関係を考える場所」をテーマに2004年に開館した、直島を代表するアートスポットです。
安藤忠雄氏が設計した地中美術館は、美しい景観を守るために建物の大部分が地下に埋まっていながら、自然光が降り注ぎ、作品の魅力が引き立つ静謐な空間が広がっています。
ジェームズ・タレル作品3点に加え、印象派を象徴する画家「クロード・モネ」や、米国彫刻家「ウォルター・デ・マリア」といった、個性豊かなアーティスト作品が展示されています。
地中美術館の入館は日時指定の予約制のため、旅行の日程が決まったら早めの予約がおすすめです。
基本情報
- 住所:香川県香川郡直島町3449-1
- 営業時間:10:00~17:00(最終入館16:00)
- 休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
- アクセス:
【自転車】宮浦港(直島)より約15~25分
【徒歩】宮浦港より約30分 - 駐車場:あり
- 公式サイト:ベネッセアートサイト直島「地中美術館」
『アフラム、ペール・ブルー』(1968年)
『アフラム、ペール・ブルー』(Afrum, Pale Blue)は、タレルさんが初期に確立した「プロジェクション・ピース」シリーズの一作品で、彼の光のインスタレーションの原点です。
壁の角に投影された青白い光が、まるで空間上に浮かぶ立方体が存在するかのように錯覚させます。
地中美術館では、この初期の代表作『アフラム、ペール・ブルー』から鑑賞をはじめ、ジェームズ・タレルが追求してきた光と空間の世界観に入り込むのがおすすめです。
『オープン・フィールド』(2000年)
『オープン・フィールド』(Open Field)は、「ガンツフェルド」シリーズの一つで、光と空間の知覚を体験できる大型作品です。
壁全体を覆うように広がる巨大な青い光のスクリーンの前に立ち、係員の案内でジェームズ・タレルの光と空間のアートを全身で体験します。
『オープン・フィールド』は、これからどんな体験が待っているのか知らない、まっさらな状態で没入してほしい作品です。
そのため、ここでは多くを語らず、ひとつだけお伝えします。
当時、旅行好きとして(失礼ながら)ジェームズ・タレルさんの名前すら知らずに地中美術館を訪れた私が、言葉を失うほどの衝撃を受け、アートの魅力に引き込まれた一作です。
『オープン・スカイ』(2004年)
『オープン・スカイ』(Open Sky)は、ジェームズ・タレルさんの最も代表的なシリーズ「スカイ・スペース」の傑作の一つです。
白い天井にぽっかりと開いた四角い穴から、移り変わる空や差し込む光を眺める癒しの体験を楽しめます。
『オープン・スカイ』では、毎週金曜・土曜の日没に合わせて開催されるナイトプログラム(完全予約制)も人気です。
静寂に包まれた空間で、ジェームズ・タレル作品をじっくり味わう特別な時間を過ごしてみてくださいね。
ベネッセハウスミュージアム(香川県/直島)

ベネッセハウスミュージアムは、1992年に開館した美術館・ホテル一体型の施設です。
安藤忠雄氏の設計により、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに建てられたこの施設は、高台から瀬戸内海を望む美しいロケーションでも人気を集めています。
館内では、絵画・彫刻・写真・インスタレーションなどの収蔵作品に加え、自然とアートの融合を味わえるサイトスペシフィック・ワークの恒久展示も見どころです。
また、ベネッセハウスミュージアムでは、「美術館に宿泊する」という特別な体験を楽しめるのも人気の秘密です。
全65室ある客室には、それぞれ異なるドローイング・絵画・版画など収蔵アーティストの作品が展示されており、瀬戸内海の美しい眺めとアートを身近に感じながら滞在できます。
基本情報
- 住所:香川県香川郡直島町琴弾地
- 営業時間:8:00~21:00(最終入館20:00)※施設により変動あり
- 休館日:年中無休
- アクセス:
【車】宮浦港より約10分
【バス】宮浦港より町営バスに乗車し(約15分)「つつじ荘」バス停下車、無料シャトルバスに乗り換えて約5分 - 駐車場:あり(ベネッセハウス宿泊者専用駐車場のみ)
- 公式サイト:ベネッセアートサイト直島「ベネッセハウス ミュージアム」
『ファースト・ライト 1989-90』
『ファースト・ライト 1989-90』(First Light 1989-90)は、光と闇を描いた版画「ファースト・ライト」シリーズ作品です。
真っ暗な闇の中に、白い光が立体的に浮かび上がるような作品で、平面でありながらジェームズ・タレルさんが提唱する光と空間の世界観を感じられます。
ベネッセハウスでは、4棟ある宿泊棟のうち、「パーク」と「ビーチ」のいくつかの客室に『ファースト・ライト 1989-90』が展示されています(2025年12月時点)。
『ファースト・ライト 1989-90』が飾られた客室に宿泊すれば、ジェームズ・タレルさんの作品を独り占めして存分に鑑賞する、特別な時間を堪能できること間違いなしです。
参照:ベネッセアートサイト直島「Benesse House パーク」
参照:ベネッセアートサイト直島「Benesse House ビーチ」
家プロジェクト 南寺(香川県/直島)

「家プロジェクト」は、直島の本村地区で展開されているアートプロジェクトです。
古民家を改装したり、集落の神社仏閣の記憶を残すエリアを活用したりと、直島の歴史や島民の生活に密着したアート作品を創り出しています。
そのなかでも「南寺」は、ジェームズ・タレルさんの作品に合わせて安藤忠雄氏が設計した新築の建物です。
「南寺」のあるエリアは、かつて5つの社寺と城址が集まっていた島民の精神的な拠り所であり、直島の歴史と文化的な中心地を後世に伝える地域活性化の成功例の一つと言えます。
「南寺」は日時指定の予約制のため、旅行の日程が決まったら早めの予約がおすすめです。
基本情報
- 住所:香川県香川郡直島町本村
- 営業時間:10:00~16:30(最終受付 16:05)
- 休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
- アクセス:本村港より徒歩約5分
- 駐車場:なし(駐輪場あり)
- 公式サイト:ベネッセアートサイト直島「家プロジェクト」
『バックサイド・オブ・ザ・ムーン』(1999年)
『バックサイド・オブ・ザ・ムーン』(Backside of the Moon)は、代表作「アパチャー」シリーズの一つです。
完全な暗闇の中で光の存在を認知させる、彼の作品の中でも特に神秘的な体験を楽しめるインスタレーションとして知られています。
鑑賞者は真っ暗な館内に誘導され、係員の案内で静寂の暗闇を壁伝いに進んでいきます。
静かな漆黒の闇でしばらく待つと、今まで見えなかった光がぼんやりと見えてくるのです。
光を物質として知覚させる、ジェームズ・タレル作品の真髄を体験できる作品です。
金沢21世紀美術館(石川県金沢市)

金沢21世紀美術館は、2004年に「まちに開かれた公園のような美術館」をコンセプトに開館した現代アート美術館です。
有名建築家・妹島和世氏と西沢立衛氏によるユニット「SANAA」が手がけた、巨大な円形のガラス張り建築が来館者を出迎えます。
金沢21世紀美術館では、2つのタレル作品だけでなく、レアンドロ・エルリッヒ『スイミング・プール』をはじめとする個性豊かな体験型作品を楽しめることで有名です。
館内の交流ゾーンや屋外展示の恒久作品など、無料で楽しめるエリアも多数あり、金沢の観光地巡りで気軽に訪れられるアートスポットとして人気を集めています。
・美術館の建物への入館(交流ゾーン)は無料です。
・特別展を含む展覧会ゾーンへの入場は、展覧会観覧券(有料)が必要です。
基本情報
- 住所:石川県金沢市広坂1-2-1
- 営業時間:
【展覧会ゾーン】10:00~18:00(金・土曜 20:00まで)
【交流ゾーン】9:00~22:00 - 休館日:
【展覧会ゾーン】月曜日(休日の場合は直後の平日)、年末年始
【交流ゾーン】年末年始 - アクセス:
【車】北陸自動車道「金沢西IC」「金沢東IC」より約20分
【電車】JR金沢駅より路線バスで約10分「広坂・21世紀美術館」下車すぐ - 駐車場:あり(有料)
- 公式サイト:金沢21世紀美術館 公式ホームページ
『ブルー・プラネット・スカイ』(2004年)
『ブルー・プラネット・スカイ』(Blue Planet Sky)は、「タレルの部屋」に設置されている「スカイ・スペース」シリーズ作品の一つです。
地中美術館の『オープン・スカイ』と同様に、白い部屋の天井に開いた四角い穴から、切り取られた空の色や雲が移り変わる様子を鑑賞できます。
『ブルー・プラネット・スカイ』は、金沢21世紀美術館の交流ゾーンにあり、無料でジェームズ・タレルの光と空間の知覚を体験できる点も、大きな魅力です。
『ガスワークス』(1993年)
『ガスワークス』(Gasworks)は、体験型装置の中で光と空間を体験する「パーセプチュアル・セル」シリーズの一作品です。
鑑賞者は仰向けの状態でタンク状の球体の中に送り込まれ、継ぎ目のない内部空間では、形や陰影、奥行きなど空間を認識する手がかりのない完全に等質な「全体野」へ導かれます。
刻々と変化する光に包まれた空間で、全身で光を感じる不思議な感覚を味わえる作品です。
『ガスワークス』は、コレクション展などの機会に不定期に展示されるため、公式ホームページでチェックしてみてくださいね。
光の館(新潟県十日町市)

新潟県・越後妻有エリアでは、アートによる地域活性化を目的として、世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」が開催されています。
光の館(House of Light)は、2000年開催の第1回「大地の芸術祭」の主要作品の一つとして建設されました。
ジェームズ・タレル作品の中でも、宿泊型のインスタレーションを体験できる、特にユニークなスポットとして注目を集めています。
1階・2階には、メイン作品『アウトサイドイン』が展示された部屋を含めて3つの和室と、浴室(Light Bath)やキッチン、トイレなどが揃っています。
光の館は、建物全体がアート作品となっており、その空間に滞在しながらジェームズ・タレルの光と空間の世界観にどっぷり浸かれる宿泊型の体験アートです。
基本情報
- 住所:新潟県十日町市上野甲2891
- 営業時間:
【見学】4月1日~10月31日 12:00~15:30(最終入館15:00)/ 11月1日~3月31日 11:30~15:00(最終入館 14:30)
【宿泊】チェックイン 16:00 / チェックアウト8:00~10:00 ※大地の芸術祭開催期間中は9:00まで - 休館日:1月1日、1月2日、2025年12月1日~2026年2月18日の火曜・水曜 ※2026年2月24日~3月31日は屋根修繕工事のため休館。
- アクセス:
【車】関越自動車道「六日町IC」より約45分
【電車】十日町駅よりタクシーで約15分 - 駐車場:あり
- 公式サイト:越後妻有 大地の芸術祭「光の館」
『アウトサイドイン』(2000年)
『アウトサイドイン』(Outside-in)は、「スカイ・スペース」シリーズの一つで、光の館を象徴する作品です。
2階にある12.5畳の和室に天窓が設けられており、屋根をスライドすると四角く切り取られた空が姿を見せます。
季節や時間帯により移り変わる空の表情や、空間に差し込む太陽の光、和室にともるささやかな照明など、さまざまな光に満ちた空間を体感できるのが魅力です。
また、宿泊者は、日の出と日の入りの時間帯にナイトプログラムを楽しめ、空の移ろいと色とりどりの照明とのコントラストを味わえます。
『ライト・バス』(2000年)
『ライト・バス』(Light Bath)は、浴槽の中を光ファイバーで照らし、光で満たされた水中を体験できる唯一無二のアート作品です。
湯船に身体を浸すことで「光に触る」感覚を味わえ、水中を揺らめく光に癒されながら、タレル作品を肌で感じられます。
『ライト・バス』は、光の館に宿泊した方のみが味わえる、非日常の幻想的なアート体験を求める方におすすめです。
熊本市現代美術館(熊本県熊本市)

熊本市現代美術館(CAMK)は、熊本市中心地に位置する、現代美術作品を中心に収蔵する市立美術館です。
多彩な企画展を開催するメインのギャラリー以外はすべて無料で入場できる点も、熊本市現代美術館の魅力の一つ。
ジェームズ・タレルさんをはじめ、草間彌生さんやマリーナ・アブラモヴィッチさん、宮島達男さんなど、世界的に活躍する4名のインスタレーション作品も無料で鑑賞できます。
基本情報
- 住所:熊本県熊本市中央区上通町2-3 びぷれす熊日会館3階
- 営業時間:10:00~20:00(最終入場19:30)
- 定休日:火曜(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始
- アクセス:
【電車】熊本駅より市電またはバス「通町筋」下車(徒歩約1分)
【車】九州自動車道「熊本IC」「益城熊本空港IC」より約30分 - 駐車場:あり(びぷれす熊日会館の有料駐車場)
- 公式サイト:熊本市現代美術館公式ホームページ
『ミルク・ラン・スカイ』(2002年)
『ミルク・ラン・スカイ』(Milk Run Sky)は、熊本市現代美術館の図書室「ホームギャラリー」の天井に照明を設置して「光の図書館」を演出した作品です。
昼間は青空さながらの青い光で染まり、毎日19:30になると、緑やピンクなど色がゆっくり移り変わる様子を楽しめます。
マリーナ・アブラモヴィッチさん作の本棚「Library for Human Use」を「光の魔術師」が彩る様子は、まるで物語の世界に迷い込んだようで、印象的なアート空間が広がります。
参照:熊本市現代美術館「ジェームズ・タレル氏が高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しました。」
霧島アートの森(鹿児島県湧水町)

霧島アートの森は、霧島連山の一つ・栗野岳のふもとの高原に位置する野外展示美術館で、鹿児島県の芸術交流拠点施設です。
四季折々に変化する霧島地域の雄大な自然の中に、草間彌生さんやチェ・ジョンファさんなど、国内外の有名アーティストが手がけた独創的な彫刻作品が配置されています。
また、屋内のアートホールにも、彫刻作品や映像作品、インスタレーションなど個性的な作品が並び、自然に癒されながら個性豊かな現代アートを満喫できるスポットです。
基本情報
- 住所:鹿児島県姶良郡湧水町木場6340番地220
- 営業時間:9:00~17:00(最終入園 16:30)※季節により変動あり
- 定休日:月曜(祝日の場合は翌日休館)、年末年始、メンテナンス日
- アクセス:
【車】九州自動車道「栗野IC」より約20分
【電車】JR栗野駅よりタクシーで約20分 - 駐車場:あり
- 公式サイト:霧島アートの森公式ホームページ
『NHK-lite』(1998年)
『NHK-lite』は、「マグネトロン」シリーズと呼ばれる一連の作品の一つです。
壁面に設置されたテレビ画面の形をした窓から、静かに変化していく光の色調や陰影を鑑賞できます。
『NHK-lite』は常設展示ではなくコレクション展などの機会に不定期に展示されるため、気になる方は公式ホームページでチェックしてみてください。
名古屋市美術館(愛知県名古屋市)

名古屋市美術館は、名古屋市中心部の「芸術と科学の杜・白川公園」内にある市立美術館です。
鬼頭鍋三郎さん・三岸節子さん・熊谷守一さん・前田青邨さんなど、名古屋ゆかりの画家の作品を中心に、日本画や西洋画など多彩な絵画を収蔵しています。
荒川修作さんや草間彌生さん、そしてジェームズ・タレルさんなど、国内外の現代アーティスト作品も展示しています。
愛知県出身の建築家・黒川紀章氏が手がけた建物は、西欧の建築様式に日本の伝統手法や色彩などが融合し、それ自体が一つのアート作品のような美しさです。
基本情報
- 住所:愛知県名古屋市中区栄2-17-25(芸術と科学の杜・白川公園内)
- 営業時間:9:30~17:00(祝日を除く金曜 20:00まで)※入館は閉館30分前まで
- 定休日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始、展示替え期間
- アクセス:
【電車】地下鉄東山線・鶴舞線「伏見駅」5番出口より徒歩約8分
【車】名古屋高速道路「白川出口」より約5分 - 駐車場:なし(周辺の有料駐車場を利用)
- 公式サイト:名古屋市美術館公式ホームページ
『知覚の部屋 テレフォン・ブース ; 意識の変容』(1992年)
『知覚の部屋 テレフォン・ブース ; 意識の変容』(Perceptual Cells Telephone Booth; Change of State)は、「パーセプチュアル・セル」シリーズの一作品です。
電話ボックスのような小さな空間で、光の明滅や色彩の変化を体験します。
胎内の脈音(子宮の音)に包まれた穏やかな空間で光の変化を感じることで、自分の知覚を認識する非日常的な感覚を味わえるでしょう。
参照:佐々木正人. 光に触れる意識――ジェームズ・タレル・インタヴュー. NTT InterCommunication Center. 1999;27:113-127
埼玉県立近代美術館(埼玉県さいたま市)

埼玉県立近代美術館(MOMAS)は、1982年に緑あふれる北浦和公園内に開館しました。
クロード・モネやパブロ・ピカソなどの海外の名だたる西洋画家から、日本の現代作家まで、国内外の多彩なアーティスト作品を約4200点収蔵しています。
参照:埼玉県立近代美術館「コレクションの舞台裏 ―光をあてる、掘りおこす。収蔵品をめぐる7つの試み」
また、埼玉県立近代美術館は「椅子の美術館」とも称され、常時数十種類の個性豊かな椅子を鑑賞できるだけでなく、自由に座ってそのデザインを体験できるのも魅力の一つです。
ほかにも、親子で参加できるワークショップや講演会なども積極的に開催し、気軽に芸術に親しめる環境が整っています。
基本情報
- 住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1(北浦和公園内)
- 営業時間:10:00~17:30(展示室への入室は17:00まで)
- 定休日:月曜(祝日の場合は開館)、年末年始、メンテナンス日
- アクセス:JR京浜東北線「北浦和駅」西口より徒歩約3分
- 駐車場:なし(提携駐車場割引あり)
- 公式サイト:埼玉県立近代美術館公式ホームページ
『テレフォン・ブース(コール・ウェイティング)』(1997年)
『テレフォン・ブース(コール・ウェイティング)』(Telephone Booth(Call Waiting))は、名古屋市美術館の作品と同様に、小さな個室で光を浴びる装置です。
「パーセプチュアル・セル」シリーズの一つで、電話ボックスのようなブースの中では、半球状のドーム内に頭部をすっぽり入れ、不思議な光の世界に身を委ねます。
青や赤などのネオンの明るさや、ストロボライトの点滅速度の変化によって、知覚する「光の形」や「光の色」が移り変わり、宇宙にただよっているかのような感覚を体験できます。
世田谷美術館(東京都世田谷区)

世田谷美術館は、1986年に開館した、四季折々の自然が美しい「砧公園」の一画にある区立美術館です。
アンリ・ルソーを代表する素朴派の画家たちや、横尾忠則さんをはじめとする世田谷区ゆかりの作家など、近代から現代に活躍したアーティストの作品約18,000点を収蔵しています。
コレクション展や個別のアーティストにクローズアップした企画展など、ユニークな展覧会を開催していることでも有名です。
世田谷美術館は、都会にありながら豊かな緑に囲まれた静かな環境にあり、東京都内でジェームズ・タレル作品に触れられる貴重なスポットです。
基本情報
- 住所::東京都世田谷区砧公園1-2
- 営業時間:10:00~18:00(展示室入室は17:30まで)
- 定休日:月曜(祝日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始、展示替え期間
- アクセス:東急田園都市線「用賀駅」より徒歩17分
- 駐車場:あり
- 公式サイト:世田谷美術館公式ホームページ
『テレフォン・ブース』(1997年)
『テレフォン・ブース』(Telephone Booth)も、埼玉県立近代美術館や名古屋市美術館と同様に電話ボックス型のインスタレーション作品です。
一人用の閉ざされた空間で、約10分間にわたり変容する光を集中的に浴び、タレル作品ならではの「光の空間」を独り占めできます。
世田谷美術館に収蔵されている『テレフォン・ブース』は、コレクション展などで不定期に公開(予約制)されるため、公式ホームページなどでチェックしてみてくださいね。
2025年3月1日~4月12日開催の「ジェームズ・タレル《テレフォン・ブース》体験」では、作品の不具合により体験中止になっています。
参照:世田谷美術館「2025.03.01 - 04.12「世田谷美術館コレクション選 緑の惑星 セタビの森の植物たち」展関連企画 ジェームズ・タレル《テレフォン・ブース》体験」
UESHIMA MUSEUM
UESHIMA MUSEUMは、2024年6月に開館した「同時代性」をテーマに国内外の幅広い現代アーティストの作品を展示する現代アート美術館です。
700点以上の多彩なコレクション作品の中から、さまざまなテーマに合わせて厳選された個性豊かな作品を鑑賞できます。
地下1階から6階までの各フロアに加え、移動のための階段も含めて建物全体が展示空間となっており、フロアごとに異なる雰囲気の展示を楽しめます。
UESHIMA MUSEUMは、2025年6月から新たに常設展示として公開されたジェームズ・タレルさんのインスタレーション作品を鑑賞できるのが魅力です。
基本情報
- 住所:東京都渋谷区渋谷1-21-18 渋谷教育学園 植島タワー
- 営業時間:11:00~17:00(WEBチケット予約制)
- 定休日:月曜、年末年始 ※その他不定休の可能性あり
- アクセス:JR「渋谷駅」宮益坂口より徒歩約10分
- 駐車場:なし(近隣の有料駐車場を利用)
- 公式サイト:UESHIMA MUSEUM公式ホームページ
『Boris』(2002年)
2025年6月から常設されている『Boris』は、霧島アートの森の『NHK-lite』と同じく「マグネトロン」(Magnatron)シリーズの一作品です。
『Boris』は、世田谷美術館の『テレフォン・ブース』と同様に、東京都内でジェームズ・タレルのアートを鑑賞できる、貴重な作品の一つです。
一人掛けの椅子に座って鑑賞するこの作品では、ブラウン管テレビの画面の形に開いた壁面の開口部から、明るさや色彩が移ろう光をぼんやりと眺める癒しの時間を過ごせます。
真っ白な展示室内では、奥行きなどの空間的な感覚がなくなり、ディスプレイ上の青い光だけが宙に浮かんでいるような、不思議な感覚を味わってみてくださいね。
まとめ:ジェームズ・タレルの作品に出会う、日本の美術館巡り

日本国内にあるジェームズ・タレルさんの作品は、都市部から離島、地方の芸術祭まで、全国11ヶ所に点在しています。
実際に「光と空間」の世界観を体感できるインスタレーション作品が多く、彼のファンやアート好きはもちろん、(私のように)初めて彼の作品に出会う方でも楽しめる点が魅力です。
今までに味わったことのない、光の世界に包まれるような感覚や、光を物体として知覚する体験を通して、非日常的な時間に没入する極上のリラックスタイムを過ごせます。
この記事が、日本中のジェームズ・タレル作品を巡る素敵な旅の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※記事内の情報は、2025年12月時点のものです。



