旅行に行きたくても、忙しい毎日の中ではなかなか時間が取れないこともありますよね。
そんなときは、絵本の世界での旅を通して、気軽に癒されてみませんか?
今回は、元司書の筆者が、旅好きの大人にもおすすめしたい「旅行気分になれる絵本」を3つのジャンルに分けて紹介します。
海辺の町を旅する物語から、異文化を感じられる世界の絵本まで、旅気分を味わえる個性豊かな10冊をピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
旅行気分になれる絵本の選び方|元司書が解説

旅行気分になれる絵本を選ぶときは、絵本の物語や舞台だけでなく、「絵の描写」にも注目するのがおすすめです。
港町の空気感や異国の街並みなど、細かな情景が丁寧に描かれている作品ほど、ページをめくるたびに旅をしているような感覚を味わえます。
潮風の香りや太陽の暖かさ、広大な大地に吹く風など、旅先の空気を感じられるような絵本は、出かける時間のない旅行好きにも癒しの時間を提供してくれます。
今回は、旅行好きでもある元司書の視点から、特に「風景を楽しめる絵本」を中心に選びました。
絵のタッチや色彩の使い方など、自分のお気に入りの一冊を見つけてみてください。
旅行気分になれる絵本はこんな人におすすめ

旅行気分になれる絵本は、子育て中の親御さんだけでなく、旅への憧れを日常の中で楽しみたい旅好きの大人にも広く向いているジャンルです。
旅行前に気分を高めたい方はもちろん、旅好きな人へのプレゼントを探している方や、絵本をアートとして楽しみたい大人にも、旅行絵本はぴったりの選択肢です。
「旅行 絵本」などで検索すると子ども向けの情報が中心に表示されますが、実際には大人も旅行気分を楽しめる作品が数多くあります。
旅行気分になれる絵本は、こんな方におすすめ
- 忙しくて最近なかなか旅行に行けていない方
- 日常の中で気軽に旅の気分を味わいたい方
- 絵本の美しい風景をアートとして楽しみたい方
- 読書を通して旅行気分を味わいたい方
- 世界の文化や風景に興味がある方
以下では、3つのジャンルに分けて厳選した10冊を具体的に紹介していきます。
旅行気分になれる絵本10選|元司書が厳選する3つのジャンル

旅行気分になれる絵本を探すなら、絵の雰囲気や旅への高揚感、未知の世界を感じられるかといった要素から選ぶのが近道です。
ここからは、「海がきれいな港町や離島」「旅に出たくなる気持ち」「異文化を感じられる世界旅行」の3つのジャンルから、元司書が厳選する10冊をご紹介します。
ジャンルを入口にすると、自分の気分や目的にぴったりの一冊に出会いやすくなります。
以下では、ジャンルごとにおすすめの絵本をピックアップしているので、自分に合う旅行気分になれる一冊を選ぶ際の参考にしてみてください。
海がきれいな港町や離島を旅する気分になれる絵本

美しい海や離島の雰囲気を味わいたいときは、港町や船旅を舞台にした絵本がぴったりです。
波の音や潮のにおい、太陽できらめく海——
そうした情景を想像させてくれる絵本は、旅に出る前の気分を高めるだけでなく、なかなか行けない旅行への思いをやさしく満たしてくれます。
ここからは、海・港・離島を舞台にした旅行絵本を3冊ご紹介します。
『みなとまちから』
『みなとまちから』は、旅先の港町で感じた海・空・街の音など、そのままの情景を表現した情緒あふれる絵本です。
きれいな模様の石やピンク色の貝殻、波に揺らめく夕陽など、港町の豊かな情景がリアルに伝わってくる一冊で、大人も子どもも楽しめます。
旅と記憶を主題に、絵の中を旅するように風景を描く絵本作家・nakaban氏の簡潔で優しい言葉に、植田真氏の淡く柔らかな海の絵が美しく調和しています。
一人旅好きの私はこの絵本を読みながら、雨宿りで入った喫茶店でののんびりとした時間や、宿泊先の旅館で普段は書かない手紙をしたためる静かな時間を思い出しました。
大人の旅好きも共感できる物語はもちろん、空や海を描いた美しい挿絵は、手元に持っているだけでも旅の記憶を思い出させてくれる一冊です。
『みなとまちから』を手に取って、じっくりと旅先で感じる情景や心静かな時間に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
『みなとまちから』は、後ほどご紹介する『とおいまちのこと』とぜひセットで手に取ってほしい絵本です。
『みなとまちから』はnakaban氏の物語に植田真氏の絵を組み合わせた一冊で、『とおいまちのこと』は、その反対に植田真氏が物語を、nakaban氏が絵を手がけています。
絵本の詳細情報
- タイトル:みなとまちから
- 著者名:nakaban 作 / 植田真 絵
- 出版社:佼成出版社
- 出版年:2019年
- ISBN:9784333028030
『旅する小舟』
『旅する小舟』は、小さな紙の舟が冒険と出会いを経験しながら大海原を超えていく、壮大な旅物語です。
この絵本を手に取ったとき、何よりもモノクロの緻密なペン画に圧倒されたのを覚えています。
文字が一切登場しない『旅する小舟』は、ペーター・ヴァン・デン・エンデ氏の独創的な表現にさまざまな意味が込められており、何度見ても新たな発見がある奥深い一冊です。
少し頼りない小さな紙の舟にとって、先が見えないほどの大海原は途方もない世界。
さまざまな海の生き物に出会い、困難に直面しながらも、ときには誰かの助けを借りて進む様子に、「この先どんな景色が広がるのだろう」と旅への想像がふくらみました。
『旅する小舟』は一度だけでは理解しきれない、深く考えさせられる作品で、大人にこそじっくり味わってほしい絵本です。
まずは自力で読んだあとに、そで(カバーの折り返し部分)にある翻訳家・岸本佐知子氏による解説に目を通してから再読すると、より物語の深みが増します。
絵本の詳細情報
- タイトル:旅する小舟
- 著者名:ペーター・ヴァン・デン・エンデ 著
- 出版社:株式会社求龍堂
- 出版年:2021年
- ISBN:9784763021281
『ペンギンクルーズ』
『ペンギンクルーズ』は、絵本作家・のはなはるか氏による、ペンギンたちが大きなクルーズ船に乗って南の島を目指す旅行絵本です。
映画館やプール、ダンスフロアまで完備した夢のようなクルーズ船での船旅は、ペンギンたちの憧れ。
3匹のペンギン家族と52匹のペンギンたちが、ワクワクしながら南の島へ向かう船旅の様子や、南の島で羽を伸ばす姿がいきいきと描かれています。
素朴ながらさまざまな服を着た可愛らしいペンギンの絵も魅力のひとつで、一匹一匹の様子を飽きることなく眺められ、思わず癒される一冊です。
客室や船長室、厨房、娯楽エリアなど、大人でも心躍る船内の設備が細かく描写され、見ているだけでも旅行気分を味わえます。
色とりどりの魚が泳ぐ美しい海や、太陽が輝き雲が浮かぶ空など、船旅・島旅ならではの情景のなかで、ペンギンたちと一緒に旅しているかのような体験を楽しんでみてください。
絵本の詳細情報
- タイトル:ペンギンクルーズ
- 著者名:のはなはるか 作
- 出版社:くもん出版
- 出版年:2018年
- ISBN:9784774327082
旅に出たくなる気持ちをくれる絵本

旅への期待感や高揚感を味わいたいなら、旅立ちの瞬間や旅先に向かう道中、冒険のわくわく感を描いた絵本がおすすめです。
「そろそろ旅に出たい」と感じているとき、旅への思いをかきたててくれたり、背中をそっと押してくれる絵本があります。
旅立ちの高揚感や、まだ行ったことのない旅先への期待——
そんな気持ちや情景を丁寧に描いた絵本は、旅行前の気分を高めるだけでなく、日常の中に小さな旅心を呼び起こしてくれます。
ここからは、旅へ踏み出す気持ちをくれる絵本を5冊ご紹介します。
『とおいまちのこと』
『とおいまちのこと』は、植田真氏が物語を、nakaban氏が挿絵を手がけた一冊で、『みなとまちから』とつながる斬新な世界観を楽しめます。
青い手紙がポストに届いた日、紅茶を淹れて、ゆっくりと手紙を読みながら、まだ見ぬ「とおいまちのこと」を想像する――旅心をそっとくすぐる物語です。
ポットのお湯が沸く音や、自然の匂いや色を表現した柔らかな言葉選びが印象的で、鮮やかで優しい色合いの水彩画とも美しく調和しています。
旅好きでもあり紅茶好きでもある私は、紅茶の豊かな香りに包まれながら、行ったことのない旅先を想像する穏やかな時間を思い出し、心がほっと癒されました。
『とおいまちのこと』は、すぐに旅に出られないときでも、日常の中でささやかな楽しみを見つけながら、次の旅行先を考える穏やかなひとときを味わえる絵本です。
私は『みなとまちから』を読んだあとに『とおいまちのこと』を手に取り、「この順番で読めて良かったかも」と感じました。ただ一方で、逆の順番でも、また違った角度から2冊に流れる世界観を味わえたのかな、とも思います。
絵本の詳細情報
- タイトル:とおいまちのこと
- 著者名:植田真 作 / nakaban 絵
- 出版社:佼成出版社
- 出版年:2019年
- ISBN:9784333028047
『たびにでよう』
『たびにでよう』は、スロヴァキア在住の絵本作家・降矢なな氏がスロヴァキアへ渡った年に出版された、とんがり帽子の男の子と黒い犬の冒険物語です。
木の実をかじると耳が大きくなったり、木イチゴを食べて鼻が長くなったり――
男の子と犬は、旅先でさまざまな不思議な出来事に出会いながら、旅の楽しみや新たな経験を体験していきます。
『たびにでよう』では、モノクロを基調にした版画に色鉛筆を乗せたような、柔らかいタッチの可愛らしい絵が魅力のひとつです。
絵本のなかの文字は少なめで、男の子の表情やユニークな絵がアニメーションのように動き、物語が進んでいくのが印象的な一冊。
筆者が本書のあとがきで、
「(前略)まだ見ぬ新しい世界への期待や不安、そして希望がこめられています。」
引用:『たびにでよう』あとがきより
と表現しているように、『たびにでよう』を読むと、旅に出るときのワクワク感とちょっぴり心細いドキドキした気持ちを思い出させてくれます。
『たびにでよう』は「旅に出てみよう!」と一歩踏み出すきっかけをくれる絵本です。
絵本の詳細情報
- タイトル:たびにでよう
- 著者名:降矢なな 作
- 出版社:童心社
- 出版年:2023年
- ISBN:9784494012510
『ぼくのたび』
『ぼくのたび』は、旅好きの絵本作家・みやこしあきこ氏が、夢のなかで知らない町に旅する物語を綴った、旅心をかきたてる一冊です。
初めて手にしたとき、リトグラフで描かれた情景豊かな挿絵に、ぐっと絵本の世界に引き込まれたことが印象に残っています。
白黒を基調にしつつ、窓から差し込む光の黄色や、車窓を彩る木々の緑、ブルーアワーのバイオレットブルーなど、淡く優しい色合いで描写する旅先の風景が魅力です。
また、ホテルの支配人として毎日忙しく働く「ぼく」が、「いつか世界中のお客さんに会いに行けたら」と遠くへ旅に出たくなる気持ちを描いた物語は、旅好きの心に刺さるはず。
旅先の写真を眺めながら、いつか自分がその風景の中に立っているかもしれないと想像するだけで、旅心をくすぐられます。
美しいリトグラフの風景画に癒されながら、次に行きたい旅行先への思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
絵本の詳細情報
- タイトル:ぼくのたび
- 著者名:みやこしあきこ 作
- 出版社:ブロンズ新社
- 出版年:2018年
- ISBN:9784893096470
『りょこう』
『りょこう』は、画家・絵本作家である麻生知子氏による、男の子とそのおじいちゃんが一緒に旅行に出かける物語です。
駅弁を買って電車に乗り、のんびりと温泉旅館で過ごす旅の様子がテンポよく描かれ、まるで一緒に旅しているかのような、ほのぼのとした旅行気分を味わえます。
また本作は、車内や温泉旅館の館内など、さまざまな場面を真上から見下ろすように描いた、ユニークな構図の挿絵も見どころです。
車内で過ごす乗客や大浴場の設備、旅館の客室や料理など、細かなところまで丁寧に描写されており、隅々までじっくり眺めて楽しめます。
日常のなかにある身近な旅行の風景が切り取られているため、物語の世界に入り込みながら、絵本を通した旅行を満喫してみてくださいね。
絵本の詳細情報
- タイトル:りょこう
- 著者名:麻生知子 作
- 出版社:福音館書店
- 出版年:2025年
- ISBN:9784834088519
『たいようオルガン』
『たいようオルガン』は、明るく鮮やかな色彩が魅力の絵本作家・荒井良二による、長い鼻のゾウバスが、オルガンを弾く太陽に見守られながら長い長い旅に出る物語です。
太陽がのぼり朝がきて、きれいな夕焼けを経て月がのぼるまで、自然豊かなエリアから大きな街に至るまで、さまざまな景色を旅します。
空を舞う鳥や自然のにおいなど、道中の情景をシンプルに描写しており、まるでゾウバスと一緒に旅しているかのような現地の風を感じられる作品です。
道を進むたびに、さまざまな乗り物や道すがらの風景が登場し、旅の道のりがいきいきと表現されています。
ときにはホッとひと息つく場面があり、「旅行らしいな」とほっこりしました。
『たいようオルガン』は、筆者が描くユニークな旅の世界とともに、のんびり好きなところに旅をしたくなる一冊です。
絵本の詳細情報
- タイトル:たいようオルガン
- 著者名:荒井良二 作・絵
- 出版社:偕成社
- 出版年:2008年
- ISBN:9784032323108
異文化を感じられる世界を旅する絵本

見知らぬ国の文化や暮らしに触れたいなら、異文化を題材にした絵本が旅のイメージを広げてくれます。
簡単には行けない遠く離れた国や地域について知りたいとき、その土地の絵本を読めば、風景や人々の暮らしなど、まるでその場所を旅しているかのような感覚を楽しめるのです。
異文化や遠い国々の物語を描いた絵本は、読むだけで未知の場所への好奇心を刺激し、次の旅先を探すヒントにもなります。
ここからは、世界の文化や風土を感じられる絵本を2冊紹介します。
『ゴハおじさんのゆかいなお話』
『ゴハおじさんのゆかいなおはなし』は、エジプトをはじめとする中東の人々に愛され続けてきた、ゆかいなゴハおじさんの物語を集めた民話絵本です。
カナダ生まれの翻訳家デニス・ジョンソン-デイヴィーズによる再話で、まぬけで頑固、ときには賢いゴハおじさんの笑い話やとんち話が、15話(全96ページ)収録されています。
エジプトの職人による布製原画を再現した挿絵は、伝統的なカラーと親しみやすい素朴さが魅力で、ゴハおじさんのほのぼのとした人柄やエジプトの自然・暮らしが伝わってきます。
絵本でありながら、児童書でもあり、エジプトの情景や旅行の空気感を想像できる可愛らしい挿絵に加えて、人生のヒントになる知恵が詰まった物語も読み応えのある一冊です。
なかには、息子と一緒にロバをひいて出かけたゴハおじさんが、「人がどう思うかではなく、自分が正しいと思うことをする」ことを教えてくれる有名なお話も収録されています。
どんなことをしても文句をいう人はいる——
そんな世の中を生き抜く大人にも刺さる人生の教訓を、ぜひエジプトの風景が浮かぶユニークな挿絵とともに味わってみてください。
絵本の詳細情報
- タイトル:ゴハおじさんのゆかいなおはなし
- 著者名:デニス・ジョンソン-デイヴィーズ 再話 / ハグ-ハムディ・モハンメッド・ファトゥーフとハーニ・エル‐サイード・アハマド 絵 / 千葉茂樹 訳
- 出版社:徳間書店
- 出版年:2010年
- ISBN:9784198628987
『シルクロードのあかい空』
『シルクロードのあかい空』は、フランスの絵本作家・イザベル・シムレールによる、若き昆虫学者がシルクロードでの旅で出会った景色や人々の暮らしを描いた絵本です。
シルクロードの交易地として栄えた中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区を舞台に、砂丘を彩る自然、人々の暮らしや文化、その地に生きる昆虫や動物の様子が描かれています。
絹の伝統技術や放牧生活を送る民族の生活など、シルクロードで発展した歴史的な背景を学べる、新疆ウイグル自治区を旅する際の教科書的な一冊です。
一方で、砂のヴェールが織りなす美しい砂丘や鮮やかな夕日、街を彩る緑など、絵本の世界に引き込まれそうな細かな線が作り出す繊細なタッチに魅了されます。
現地の暮らしや文化の紹介の合間に、見開きで自然の情景が描かれたページが差し込まれるような構成で、物語も絵も読み応えのある一冊。
美しい情景に癒されつつ、シルクロードで生きた古代の人々に思いをはせながら、いつか訪れてみたいと思える作品です。
絵本の詳細情報
- タイトル:シルクロードのあかい空
- 著者名:イザベル・シムレール 作 / 石津ちひろ 訳
- 出版社:岩波書店
- 出版年:2018年
- ISBN:9784001126730
まとめ:旅気分を味わえるお気に入りの絵本を見つけてみてください

旅気分を味わえる旅行絵本は、ジャンルで絞り込むと自分のニーズに合った一冊にたどり着きやすくなります。
「海・港・離島」「旅立ち・冒険」「異文化・世界」という3つのジャンルは、それぞれ異なる旅を”体験”できるため、目的や気分に合わせて選ぶのがおすすめです。
―旅行前に読めばワクワク感が高まり、旅の後に手に取れば余韻をじっくり味わえる―
大人にとっても子どもにとっても、絵本はそんな「旅の入口」になる存在です。
また、旅行に行きたくても行けないときは、絵本を読めば旅先の雰囲気に癒されながら、旅した気分も味わえます。
気になる一冊が見つかったら、図書館や書店で手に取り、イラストの雰囲気や言葉選びを確かめながら、旅への気持ちをかき立てるお気に入りの一冊を見つけてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※記事の内容は、執筆時点の情報です。


